X広告は「検索」を増やすのか?金融クライアント事例で解き明かす、広告接触と検索リフトの相関
X Corp. Japan社と電通デジタルは、Xのデータクリーンルーム(DCR)「Omusubi」を活用し、X広告の接触が検索行動に与える影響を可視化する「検索リフト分析」に取り組みました。本記事では、分析の背景や手法、分析から得られた成果、そして今後の展望について、各社の視点から紹介します。
なぜX広告の「検索リフト」を検証したのか?
――まず、今回の分析ソリューションが開発された背景や、クライアントの課題について教えてください。
電通デジタル 佐藤:昨今、ユーザーは単一のプラットフォームから検索や購入を行うのではなく、複数のチャネルを複雑に跨いで情報に接し、最終的な行動に至ると考えられます。特に金融商材のような検討期間が長いものでは、その傾向が顕著です。
電通デジタル 加藤:そうした中で、X広告がブランド認知だけでなく、その後の「検索」という能動的な行動変容にどれだけ寄与しているかを可視化したい、というニーズがクライアント側に高まっていました。
分析の要:Xデータクリーンルーム「Omusubi」とは?
――今回の分析は、XのDCR「Omusubi」を活用した点が鍵ですね。まず、Omusubiとはどのようなソリューションか教えていただけますか?
X Corp. Japan 髙木氏:Omusubiは、Xと電通が共同で提供するデータクリーンルーム(DCR)と呼ばれるソリューションです。プライバシーを保護した安全な環境下で、Xの広告データと、クライアントや電通デジタルが保有する各種データを連携させ、分析することができるデータ基盤です。Omusubiを用いると、広告管理画面のデータだけを見る通常の分析を超え、キャンペーンをより深く、柔軟に分析することができます。
―― Omusubiならではの特徴、強みはありますか?
加藤:Omusubiのユニークな点は、広告接触だけでなく、「いいね」や「リポスト」といったユーザーの能動的な『エンゲージメント』データと掛け合わせた分析が可能な点です。これにより、広告にどう『反応』したかが分かります。X以外の多くの他プラットフォームのデータクリーンルーム分析では、広告接触したユーザーのアクション詳細を細かく取得することができない場合がありますが、Xでは広告に触れたユーザーが起こしたアクション(≒エンゲージメント)や公開投稿の特定キーワードの発話有無の情報の取得が可能となっています。
また、電通ではX広告と相性が良いデータを多数保有しています。テレビの実視聴データに基づく「マス×X」の統合分析や、購買データを使いX広告単体では取得が難しい「実購買」を可視化する分析など、フルファネルでの分析が可能となっています。
どのように「検索リフト」を測ったのか?
―― では、Omusubiを利用した電通デジタルの「検索リフト分析」 について、今回はどのように『検索リフト』を分析したのでしょうか?
佐藤:従来、SNS広告に接触したユーザーが、その後に自然検索行動を取ったかを、正確に可視化・計測することは困難でした。そこで我々は、Xと電通が保有するデータを組み合わせ、両者のアセットを最大限活用した分析設計を構築しました。この分析では、電通の Peopleタグで計測した検索経由のサイト来訪者を、Omusubiの広告接触ログと、個人を特定しない形で紐づけています。これにより、広告に接触した人が、どの程度検索行動に至ったかの可視化を実現しています。
そして、この可視化されたデータを用いて、広告に接触していない人との差分(検索リフト)を算出することで、統計的な観点から広告の効果を検証しました。
X広告は確かに「検索」を増やしていた
―― 分析結果について詳しくお聞かせください。まず、X広告は、検索行動の増加に寄与していたのでしょうか?
電通デジタル 上本:はい。X広告接触者は、非接触者と比べて「検索経由のサイト来訪」が明確に増加(検索リフト)していることが分析結果から確認できました。今回の配信は、トップファネル向けの「認知施策」と、ミドルファネル向けの「獲得施策」という異なる施策にて分析しましたが、結果どちらも増加(検索リフト)していることがわかりました。特に、獲得施策での配信の方が検索リフトのスコアが大きい結果となりました。この結果から、金融商材に関心のある層への貢献が大きいことが確認できました。
多様なターゲットに検索リフト効果を確認
――広告の接触/非接触だけでなく、よりユーザーのモーメントを深堀りするような分析はされていたのでしょうか?
上本:はい、設定していたターゲティング粒度での分析も行いました。獲得施策では、X広告における純正ターゲティング(金融商材関心層)と、電通デジタル独自で設計したターゲティング(関連ワード関心層)を設定していました。
結論、双方のターゲティングでも検索リフトが確認できた結果となり、「X広告が検索行動を促す」という効果が見えたことは大きな発見です。加えて、Xの純正ターゲティングの検索リフト効果が、特に顕著にみられ、X広告におけるターゲティング精度の高さも改めて確認することができました。
X Corp. Japan 髙木:X広告では興味関心やX上でポストされたキーワード、ハンドルなど、様々な切り口を指定してターゲティングを設定することができます。これらのターゲティングの根幹にあるのは、X上で日々交わされている膨大な「会話」や「エンゲージメント」データ、つまりユーザーのリアルタイムな興味・関心です。
今回、上本さんのお話にあった「純正ターゲティング」が特に顕著な検索リフト効果を示した、という分析結果は、我々にとっても非常に嬉しいものでした。これは、Xのターゲティングが、『今まさに関心を持ち、情報を収集しようとしている』ユーザーを、その会話や行動から的確に捉えられていることの表れだと考えています。
X広告の「検索起点」としての価値
―― 最後に、今回の分析で見えた「X広告の価値」とは何だったのでしょうか?
X Corp. Japan 髙木:X広告が単なる認知獲得に留まらず、ユーザーの「検索」という能動的な行動の『起点』となっていることを、データで明確に示せた点に大きな価値があると感じています。
佐藤:これまで感覚的に語られがちだった部分をOmusubiによって定量化したことで、X広告を「検索行動を促す施策」としてメディアプランに組み込みやすくなりました。
加藤:今後もX社と連携し、Omusubiを活用した広告効果の可視化を、様々な角度から進めていきたいと思います。
PROFILE
プロフィール
佐藤 潜一
2021年電通デジタル新卒入社。 データを活用した広告の効果検証業務に従事し、社内外のメンバーを統括した大規模な分析プロジェクトをリード。2025年よりマーケティングプランナーを兼任し、データ基点の戦略設計や分析によるPDCAの高度化を支援。
加藤 裕生
2023年電通デジタル新卒入社。 入社後はMetaグループに所属し、プラットフォーマー向き合いとして社内各所と連携しながら、プロジェクト推進およびセールス支援に従事。 2025年よりXグループに異動し、X広告の拡販や電通独自メニューの開発を推進。あわせて、入社以来取り組んできたデータクリーンルームを活用したデータ起点の提案・活用支援にも携わっている。
上本 真太
デジタル専業代理店でのメディアコンサルタントや、総合広告代理店でのビジネスプロデューサーを経て、2025年電通デジタル中途入社。現在は、分析設計の立案から実行、検証までを一貫して支援。他にも1st Party Dataを用いた分析やデータクリーンルームの利活用など、多数のプロジェクトを担当。
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