Media Planning Agentが実現するメディアプランニング革命

メディアプランニングは年々複雑化し、属人性や作業負荷の高さが大きな課題となっています。こうした状況を打開するため、電通デジタルは AIを活用したマーケティングソリューションブランド「∞AI(ムゲンエーアイ)」シリーズの中で、デジタルメディアプランニングに特化した専用AIエージェント「Media Planning Agent」を開発しました。本記事では、∞AIシリーズの全体像から、Media Planning Agentが誕生した背景、開発を支える設計思想、そして導入によって実現される価値や今後の進化まで、その全容を担当者4人に聞きました。

デジタルメディアプランニングに特化した専用AIエージェント

――まず、シリーズ全体である∞AIの概要を教えてください。

毛利:∞AIは、もともと電通デジタルが2023年にリリースした、 AIを活用したマーケティングソリューションブランドです。その後、2025年5月に電通グループ独自のAI戦略である「AI For Growth」のプロダクト群に組み込まれ、AIX(AIトランスフォーメーション)を実現するための中核的なブランドとして位置づけられるようになりました。

現在∞AIシリーズとしては、①∞AI Ads1&2、②∞AI Social、③∞AI LP、④∞AI Chat、⑤∞AI Contents、⑥∞AI Marketing Hubの⑦∞AI Customer Data Hub、⑧∞AI Customer Twin、⑨∞AI MC Planning、⑩∞AI CX Planningといったソリューションを展開しています。

「AI For Growth」は、単なる技術導入のスローガンではありません。電通グループが大切にしているのは、「人とAIが対話し、互いの知を高め合うことで社会をより良くしていく」という思想です。∞AIをはじめとするプロダクト群は、この理念をもとに設計されています。

AIと共に課題に取り組むことで、私たち自身の知見や能力が新たなレベルに引き上げられるだけでなく、クライアントのマーケティング支援、さらに電通グループ全体のアセットや組織体制を次のステージへ進化させる。それが∞AIシリーズが目指す姿です。

毛利 光太郎(電通デジタル データ&AIソリューションセンター 部門長補佐 兼 データソリューション戦略部 事業部長)
毛利 光太郎(電通デジタル データ&AIソリューションセンター 部門長補佐 兼 データソリューション戦略部 事業部長)

――∞AI MC Planningの位置づけと概要を教えてください。

毛利:∞AI MC Planningは以前の記事で紹介したように、デジタルメディアプランニングにおける主要プロセス「戦略立案」「デジタルメディアの設計・プラン」「実行」の3領域をAIで支援します。それぞれの領域に特化したAIエージェントを活用することで、メディアプランニング業務の効率化と高度化を同時に実現し、クライアントへの提供価値を高めることを目的としたソリューションです。

――Media Planning Agentとは、どのようなものなのでしょうか?

毛利:Media Planning Agentは、∞AI MC Planningに搭載された3つのAIエージェントのうちのひとつで、デジタルメディアプランニングにおけるオペレーション上のボトルネック解消に特化した専用AIエージェントです。

AIエージェントの特長は、その自立性の高さにあります。一般的な生成AIのように、人がプロンプトを工夫しながら細かいやりとりを積み重ねる方式ではなく、より自然な対話だけで多様な業務支援が可能です。

近年、プラットフォーマーの多様化によりメディアプランニング業務は複雑化し、属人化が進んでいます。本来、∞AI MC Planning自体がその省力化・高度化を目的として設計されていますが、そこにメディアプランニング領域に精通した専用AIであるMedia Planning Agentを組み合わせることで、現場の負担をさらに大きく軽減できるようになりました。


属人化を克服する「高度な標準化」への挑戦

――Media Planning Agentの開発背景を教えてください。

櫻井:開発の最大の背景は、「担当者によってアウトプットにブレが生じていた」という課題です。新入社員であれ、中途入社のメンバーであれ、キャリアはそれぞれ異なりますが、クライアントから見れば、誰もが同じ電通デジタルの担当者です。個々の強みや個性は生かしつつも、その前提となる「土台の質」は共通化しておく必要があると考えました。そこで、矯正するのではなく、業務プロセスを高度に標準化することを念頭に開発を進めました。

――「高度に標準化」とは、どういう意味ですか?

櫻井:たとえばこれまで、いわゆる「秘伝のタレ」のように口伝で伝えられてきた思考プロセスがあります。これらを改めて言語化し、プロンプトとしてAIに組み込むことで、誰もが同じ質のアウトプットを出せるようにしています。その際、単に既存ノウハウを整理するだけではなく、外部データの活用や、電通/電通デジタルが持つ各種ソリューションとの連携なども組み合わせ、より高度に進化したAIエージェントになるよう設計しています。

櫻井 康人(電通デジタル データ&AIソリューションセンター AIイノベーション事業部 グループマネージャー)
櫻井 康人(電通デジタル データ&AIソリューションセンター AIイノベーション事業部 グループマネージャー)

スピード・柔軟性・拡張性――開発を支える3つの設計思想

――開発にあたって工夫した点を教えてください。

渡部:工夫した点は、大きく3つあります。

最初に取り組んだのは、「ひととおり動くプロトタイプを短期間で作ること」でした。プランナーの皆さんは、開発経験が少ないため、白紙の状態から「何を実現してほしいか」を言語化するのが難しい場面が多くあります。しかし、実際に動くものが目の前にあれば、具体的な要望が自然と出てきます。そのフィードバックをいち早く得たかったため、スピードを最優先に開発を進めました。結果として多くの意見を反映でき、現場で本当に使ってもらえるソリューションへと磨き上げることができました。

次に意識したのは、継続改善が前提となる設計です。開発では「まず動くものを作る」ことが重視されるあまり、その後に場当たり的な増築を繰り返して、最終的に手の施しようがなくなるケースがあります。そうした事態を避けるため、最初はあえて抽象度の高い構造で設計し、後から柔軟に肉付けできるアーキテクチャを採用しました。これにより、保守性と汎用性を両立し、長期的に改善し続けられる土台を整えています。

3つ目は、AIエージェントを開発するための汎用的な基盤(フレームワーク)を先に作ったことです。この基盤はプログラミング不要で、非エンジニアでもAIエージェントを構築できます。Media Planning Agentもこの基盤上で作られており、開発プロセスそのものから属人化を排除しています。この仕組みによって、「私以外のメンバーでもチューニングが可能」「Media Planning Agent以外のAIエージェントも同じ基盤上で開発できる」「その結果、エージェント同士を連携・相互進化させられる」といったメリットが得られます。実際、電通デジタルのさまざまなAIエージェントも同じ基盤上で動いているため、他のAIエージェントが進化すれば、Media Planning Agentも連動して価値が高まるという、エコシステムとしての広がりも期待できます。

渡部 隼平(電通デジタル データ&AIソリューションセンター CXテック事業部)
渡部 隼平(電通デジタル データ&AIソリューションセンター CXテック事業部)

AIエージェントにより解決できる2つの社内課題

――運用視点からは、どのような課題があったのでしょうか?

岩崎:私は日頃から現場の声を聞く機会が多いのですが、特によく挙がるのが、「プランニングに非常に多くの作業時間が取られてしまう」という悩みです。先月実施したアンケートでも、プランニングやシミュレーションに時間がかかることを負担に感じている人が非常に多いという結果が出ました。

時間がかかる理由はいくつかありますが、特に大きいのは広告メディア数の多さです。広告メディアごとに行うべき作業が非常に多く、かつそれらは横展開が難しいため、単純に業務量が増えているだけでなく、業務の難易度自体も上がっているのが現状です。

これまでは、こうした課題を乗り越えるために、社内の詳しい人に相談するというやり方が一般的でした。しかし最近では、「必要な情報を探す」「詳しい人に聞く」といった一連の社内コミュニケーションコストにも負担を感じる声が増えています。一方で、社内には実は膨大な情報資産がありながら、それを十分に活用できていないという別の課題もありました。

AIエージェントの搭載によって、「作業コストの増大」と「社内情報の活用不足」をつなぎ、まとめて解決できるのではないかという手応えを感じていました。実際にMedia Planning Agentを導入したことで、「コミュニケーションコストの削減」「育成コストの削減」に大きく寄与しています。さらに、それらの改善が結果として、プランニング業務の高度化・平準化へとつながりつつあります。

岩崎 真(電通デジタル パフォーマンスマネジメント部門 業務改革ユニット 事業部長)
岩崎 真(電通デジタル パフォーマンスマネジメント部門 業務改革ユニット 事業部長)

高品質なメディアプランニングを圧倒的なスピードで実現

――Media Planning Agentの強み、独自性はどこにあると考えていますか?

毛利:まず挙げたいのは、メディアプランニングプロセスの完全な型化と自動化を実現した点です。さらに、電通グループが持つ戦略レイヤーとシームレスに連携できる設計になっているため、従来のプランニングで課題となっていた属人性や工数の増大を大幅に排除できるところが、Media Planning Agentならではの強みだと考えています。

Media Planning Agentを例えるなら、「高性能な自動ナビゲーター付きの工場ライン」のような存在です。これまでのメディアプランニングは、熟練プランナーが一つひとつ手作業で行っていたため、人によって品質にムラが出たり、大量の案件をさばくことが難しかったりしました。しかしMedia Planning Agentがナビゲーターとして伴走することで、戦略に基づいた最適な設計図をもとに、正確かつ迅速にアウトプットを仕上げることが可能になります。

つまり、経験豊富な職人を大量に揃えなくても、高品質なメディアプランニングを圧倒的なスピードで実現できる。これこそが、Media Planning Agentの独自性であり、大きな価値だと考えています。

またMedia Planning Agentは、人間中心で行われてきたマーケティング業務において、伴走しながら、場合によっては主導し、実行力のあるパートナーとして機能します。これにより、メディアプランナーが抱える「業務難易度の高さ」「オペレーション工数の多さ」といった2つのボトルネックを同時に解消できます。


Media Planning Agentが次に目指す進化とは

――今後の構想を教えてください。

毛利:Media Planning Agentは、∞AI MC Planningを構成する非常に重要な要素であり、今後も機能面の進化と自律的な進化の両面でアップデートを進めていく予定です。今後の拡張としては、

  • 対応広告メディアの追加
  • オフライン領域への拡張
  • 自動入稿機能の追加・外部サービスとの連携
  • PowerPoint出力機能の実装
  • 広告メディア選定アルゴリズムの精度向上

など、実務をより強力に支援する多くの機能を計画しています。また、Media Planning Agentをクライアントに直接提供できるよう、クライアント専用アカウントの発行も視野に入れています。これまでは電通デジタルのアカウントプランナーを介して利用いただく形でしたが、今後はクライアント自身がより主体的に活用できる環境を整備したいと考えています。

その際、Media Planning Agentを「汎用ツールとして一律に提供する」のではなく、クライアントごとの状況に合わせて個別にカスタマイズしてご提供する構想を持っています。さらに、クライアントが保有するデータをシステムに組み込むことで、メディア×CMX(一気通貫の顧客体験設計)の統合的な設計も可能にしていきたい。こうした統合的な設計により、クライアント固有の課題や市場環境に合わせた、より精緻なメディアプランニングが実現できると考えています。

ただし、私たちが目指しているのは「ツールを提供して終わり」ではありません。Media Planning Agentを活用いただくためには、まずクライアントの業務プロセスを深く理解し、そこからAI協創型の業務プロセスへどう進化させるか、そのためのワークプランを丁寧に設計する必要があります。

そして導入後も、「組織へのプロセス浸透」「推進人材の育成」「運用の定着化」まで、一気通貫で伴走し続けること。これこそが電通デジタルの最大の強みであり、ツール提供と合わせて価値を発揮していく部分だと考えています。

――最後に、クライアントへのメッセージをお願いします。

櫻井:私たちは、AIプロダクトを提供することで、クライアントが持続的に成長できる環境をともに創り上げたいという思いで、Media Planning Agentを開発しています。より良く、持続可能な組織づくりに向けた一歩として、このAIエージェントをご検討いただければ幸いです。私たちも最後まで伴走し、その実現を全力で支援してまいります。

PROFILE

プロフィール

毛利 光太郎

データ&AIソリューションセンター 部門長補佐 兼 データソリューション戦略部 事業部長

外資系コンサルティングファーム、事業会社のプロダクトオーナー、メディアのストラテジーを経て現職。データ活用したソリューション企画とコンサルティングを主に担当。

毛利 光太郎

櫻井 康人

データ&AIソリューションセンター AIイノベーション事業部 グループマネージャー

2015年より電通グループに在籍し、電通デジタルではマーケティングコミュニケーション領域を中心に、クライアント支援から媒体社との協業まで幅広いプロジェクトを牽引。現在は、クライアント企業の内製化支援をはじめ、AIエージェントの開発および活用コンサルティング、さらにデータ×マーケティング領域における価値創出をミッションとして担当している。

櫻井 康人

岩崎 真

パフォーマンスマネジメント部門 業務改革ユニット 事業部長

2012年より電通グループに在籍し、電通デジタル前身組織からマーケティングコミュニケーション領域のクライアントワークに従事。2020年以降はミッションを転換し、社内の業務効率化・生産性向上を推進。業務フローの再設計からツール開発まで幅広く担当し、近年は∞AIを活用した業務改善プロジェクトにも取り組んでいる。

岩崎 真

渡部 隼平

データ&AIソリューションセンター CXテック事業部

データ&AI部門にてAIエンジニアとしてプロダクト開発から生成AIの導入支援まで幅広い領域を担当。2019年に電通グループ入りし、AI開発を強みとするデータアーティストでPMとしてキャリアを開始。文系卒・営業職出身ながら実務を通じてエンジニアリングスキルを習得し、2023年より電通デジタルでAIエンジニアとして活躍。現在はMedia Planning Agentをはじめとした独自エージェント開発およびそれらの構築基盤の開発を中心に手がけている。

渡部 隼平

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