Web Summit 2025リスボンで感じたビジネスカルチャーショック
Web Summitは、毎年ポルトガル・リスボンで開催される欧州最大級のテックカンファレンスです。16回目を迎えた2025年は、11月10~13日の4日間で、156カ国から7万人超、2700社以上のスタートアップが参加しました。本記事では、このカンファレンスに参加した電通デジタルの若手社員2人に、現地での気づきと学びについて話を聞きました。
熱量×テクノロジーが加速するヨーロッパ流ビジネスの現場
―― Web Summitとはどのようなカンファレンスなのでしょうか?
海老原: Web Summitは、毎年ポルトガル・リスボンで開催される欧州最大級のテックカンファレンスです。幅広いテーマを扱い、欧州を中心に多様なスタートアップが集まることでも知られています。ビジネスカンファレンスとしては、世界最大のモバイル技術展示会「MWC( Mobile World Congress)」などと同規模にも関わらず、日本での知名度はまだ低いのが実情です。
――今回、若手のお二人が抜擢されたと聞きました。参加の経緯を教えてください。
成宮: 私はマーケティングコミュニケーション領域の営業ヘッドクォーターとして組織を牽引する営業戦略部に所属し、日々クライアントの課題解決の役に立つアセットを企画・開発しています。同時に、組織の在り方や未来についても考えています。
今回のカンファレンス参加は、コモディティ化が進むデジタルマーケティング業界において、電通デジタルが成長を続けるためには何が必要なのか、といった議論が起点となりました。今の電通デジタルには、成長のドライバーである若手社員が「適切な危機感」を持ち「独自の目線」で競争力を創発することこそが必要という考えに至りました。そこで、欧州最大規模のビジネスカンファレンスながら日本からの参加者が極めて少ない Web Summit に注目。若手社員自ら目的とKPIを設定し、現地に赴き、最新のテクノロジーに直接触れ、人と関わり、組織に還元できる「何か」を掴んでくることを期待されました。私は以前から海外のカンファレンスに興味があったので、上長から声をかけられて即答しました。
――Web Summitに参加されて、まずどのようなことを感じましたか?
成宮:ヨーロッパ中のスタートアップが一堂に会しているようで、会場にはビジネスへの熱意や勢いがあふれており、まずその雰囲気に圧倒されました。
日本では、スタートアップとの商談もまずはメールでアポイントを取るケースが多いと思いますが、Web Summitでは会場そのものが商談の場になっています。専用アプリで気になる企業を探し、直接会って会話をしながら、話がまとまればその場で商談に進み、「また連絡しよう」とスピーディに話がまとまっていく。そのテンポの良さが、とても印象に残りました。
――Web Summitで利用されたアプリがとても使いやすいと伺いましたが、どのような点が特徴的だったのでしょうか?
成宮:参加者同士のコミュニケーションを自然に促す設計になっていて、登録すると国籍や会社名、氏名が相互に確認でき、それぞれの項目で検索やソートができます。会社についても、マーケティング系やAI系といったカテゴリ別に絞り込めるほか、個別にメッセージを送ることも可能です。
私たちは国籍で絞り込み、日本企業の参加者に直接メッセージを送って情報交換を行いました。日本ではなかなか難しい、気軽なアポイントの取り方なので、とても新鮮でした。メールアドレスも登録されているため、会期後もメールでやりとりができ、実際に何件か継続的なやりとりにつながっています。
海老原:特にメッセージ機能が優れていて、「いま会場のこの辺にいるんだけど、少し話さない?」といった連絡が突然届き、実際に落ち合って10分ほど会話をして、また次へ進む。そんな軽快なコミュニケーションが次々と生まれていました。アプリがその下支えをしている点は、とても印象的でした。
ビジョンファーストのビジネス
成宮:もう一つ印象的だったのは、誰と話しても「ビジョンファースト」だったことです。日本の商談では、提供できる機能や事例から説明しがちですが、Web Summitで出会った方々は、「何を実現したいのか」「どんな形で世界を変えたいのか」といったビジョンから話を始めます。その思いに共鳴した相手と、次の段階として具体的な議論に進んでいく。ビジネススタイルの違いを強く感じました。
海老原:私も大きな衝撃を受けました。具体的な話はその次で、まずはビジョンありき。強い思いを起点に会話が進んでいく点に、圧倒されました。
成宮:実際に「あなたの会社はどんなビジョンを持つ会社なのか?」と聞かれることも多かったのですが、会社のパーパスを人前で語るのは簡単ではなく、結果的に主要な業務内容を説明する形になりました。それでも関心を持ってもらえたのは良かったと思います。
AIのビジネス利⽤のその先
――AIのトレンド感はどう感じられましたか?
海老原:やはり、AIを活用したソリューションは非常に多く見られました。特にヘルスケアやファイナンスなど特定の領域に特化し、明確な違いを打ち出している企業が多かった印象です。小さな違いであっても、それを強みとして「これが自分たちのサービスだ」と強く訴えるスタートアップが数多く集まっていました。
成宮:巨大テック企業のCEOから、小規模なスタートアップのメンバーまで、AIに対する考え方が驚くほど共通しているのが印象的でした。日本では、AIは「新しくて便利なツール」として捉えられることが多いですが、欧州ではすでにその先に進んでいます。そこでのAIは当たり前の存在で、業務プロセスをAIに置き換える段階は終わり「AIが前提の世界」が語られていました。
ただ、こうした議論は、これまで山本覚CAIOが語ってきた内容と大きくは変わらないと感じました。グローバルが一方的に進んでいるわけではなく、目指している世界観は同じだと確認できたことは、大きな気づきでした。重要なのは、本質的な価値をもとにビジネスプロセスを設計し、人とAIを分けることなく最適な方が各タスクを担う姿勢です。特に、「本質的な価値」を理解するためには、文化、倫理、クリエイティビティが不可欠であり、それこそが人間に求められるものです。この視点を持つことの重要性を改めて実感しました。
海老原:正直に言えば、現場レベルでAIについてそこまで深く考えていませんでしたが、今回のWeb Summitでの経験を通じて、AIとどう向き合うべきかを、もう一段深く考えてみたいと思うようになりました。
グローバルで通用するdentsuの名前、その先にある課題
――Web Summitに参加した企業から、電通グループはどのように見られていましたか?
成宮:社名を出すと、「ああ、dentsuね。知っているよ」と反応されることが多く、その認知度の高さは素直に嬉しく感じました。
一方で「日本の市場はよくわからない」と言われることも多かったです。アジアの中でも最優先市場という位置づけではなく、「言語や文化的な障壁が高く、参入の優先順が高くない」というニュアンスを感じる場面もありました。ただ、「日本市場に参入する際には dentsuに頼むよ」と言われることが多かったのも事実です。真っ先に名前が挙がる点は、トップエージェンシーである電通グループならではの強みだと感じました。
――課題だと感じた点はありましたか?
成宮:最初に圧倒されたポイントでもありますが、やはりあのスピード感は見習うべきだと思いました。手順を丁寧に積み重ねるのは日本の良さでもありますが、会話ベースですばやく意思決定し、思い切って進める姿勢をとりいれられれば、今後他社との差別化につながるポイントになるかもしれません。
海老原:成宮さんの話と根本は同じだと思うのですが、「世の中をこうしたい」「クライアントにこのように貢献したい」というVisionについてもっと若手社員も真剣に議論を深めるべきだと思いました。Visionなどは管理職や年長者が規定するものと、心のどこかで思ってしまっていましたが、もっと若手社員全員がそれを解釈し共有することで、自分たちのビジネスの理解度が高まり、自信が生まれ意思決定のスピードが上がるように感じました。
ビジネスの背景にあるカルチャーの違いを実感
――Web Summitに参加して、得られたことや新たな発見、気づきがあれば教えてください。
海老原:普段はグローバルセンターでグローバル案件を担当していますが、海外の担当者とやりとりをする中で、「どこか噛み合わない」と感じる場面が少なくありません。たとえば、依頼内容の抽象度が高かったり、納期に対する感覚が違ったりと、前提条件そのものにズレを感じることがあります。今回、さまざまな方と実際にビジネスの文脈でコミュニケーションを取ったことで、そうした違いの背景にある考え方やカルチャーが腑に落ちる場面が多くありました。その違いを体感として理解できたのは、大きな収穫だったと思います。
成宮:そうですね。異なる立場や視点で意見を交わせたのは面白かったです。営業戦略部は普段、グローバル企業と直接向き合う機会が多くないので、同じ体験をしていても、受け取り方や気づきが違うという点がとても興味深かったですね。
Web Summitで気づいた、自社理解とコミュニケーションの重要性
――Web Summitに参加したことで、自分の中で変わったことや、今後に向けた意気込みがあれば教えてください。
成宮:最新のビジネストレンドに数多く触れられたことは、大きな刺激になりました。これからも、より意識的に情報を追い続けていきたいと思います。また、今回出会った方々は、経営層に限らず、どのレイヤーの人も視座が高く、「会社として何を目指すのか」「そのために何をすべきか」を自分の言葉で語っていました。その姿勢はぜひ取り入れていきたいと感じました。会社のビジョンや取り組みを理解し、自分自身も語れるようになることの大切さを学びました。
私も海老原さんも、以前から海外カンファレンスへの参加を希望していましたが、実際に声を上げたことで今回の機会につながりました。電通デジタルには、手を挙げれば応えてくれる土壌があるという点も実感しました。
海老原:私自身は、まず自社理解をもっと深めたいと感じました。Web Summitの会場で、初対面の方に電通デジタルがどんな会社なのかを端的に説明するのは、思っていた以上に難しかったですし、自分が関わっていない領域について、ほとんど知らなかったことにも改めて気づきました。
また、全体を通じて、コミュニケーションを非常に大切にする姿勢が印象的で、話すたびに考えさせられることが多くありました。普段は、クライアントの課題を具体化し、それに対するソリューションを提案する形になりがちですが、もう一段抽象度を上げて、本当は何に悩んでいるのかという根本まで考えられるようになりたいと思いました。
今回の海外出張を通じて得た気づきは本当に多く、またこうした機会があればぜひ参加したいですし、他の若手メンバーにもぜひ体験してほしいと感じています。
PROFILE
プロフィール
成宮 楓
2022年、新卒で電通デジタルへ入社。運用コンサル業務を経て、現在はアカウントプランナーとして顧客の課題解決に取り組む。その傍らマーケティングコミュニケーション領域の営業戦略部に所属。社内に向けて電通デジタルの強みとなるソリューション開発プロジェクトに参画している。
海⽼原 沙英
2023年、中途で電通デジタルへ入社。前職ではデジタル広告会社にてアカウントプランニング業務やソーシャル運用を担当し、現在はグローバルセンターに所属してアカウントプランナーとして顧客の課題解決に取り組んでいる。英語を使用する業務経験も豊富で、ラグジュアリー系グローバルブランドを担当。
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